医大生 の blog

医学部のこと。読んだ本について書きます。

ゆるふわ女医になりたい友達のはなし

わたしメジャー科に行くつもりはないから、前期の実習にはそこまで興味がないんだよね

 

一月から始まる実習の話をしていたときに彼女は言った。

メジャー科とは消化器、循環器、呼吸器などメインの臓器を扱う診療科のことである。忙しくてQOLが低く近年人気がない。

どの科に行きたいのと聞くと、皮膚科か眼科か耳鼻科、と答える。いわゆるマイナー科だ。可愛くて男の子に人気がある友人で、マイナー科志望はイメージにぴったり合う。

彼女は週5で働きたくはない、週3くらいがちょうどいいなと続ける。わたしは笑ってイメージにぴったり合うと答えた。別に馬鹿にしているわけではなく、あなたらしい合理的な考え方だね、という意味である。みんなからそう言われる、と彼女も笑う。

彼女はCBTという医学部の共通試験の前に田舎の病院にバイトのお給料をずっと調べていたらしい。こんなに勉強したらついてくる旨味ってなんぼのもんなん、と思ったのだろう。一日十万円もらえるなどと言っており、まだ病院実習すら始まっていないのに求人サイトを見ているなんて彼女くらいなものだ。

彼女はいわゆる、ゆるふわ女医のタマゴなのだろう。ゆるふわ女医とかくと字面からなんとなく、意味されることや揶揄が含まれることもわかるかもしれない。お医者さんの世界では、女医が多くなるとQOLが高いマイナー科(皮膚科、眼科、耳鼻科など)に人が集まり、メジャー科(循環器、呼吸器、消化器)や男性医師に負担がかかるから女医は多すぎないほうがいいと言われている。有名になった医学部入試不正事件を思い出して欲しい。入試で男子に下駄を履かせているなんて男女差別もいいところ言語道断と大問題になっていた。こんなことがまかり通っていたのかと思われるかもしれないが、正直この業界の人は「薄々知ってた」という人も多くいるだろう。

この問題を議論すると本が一冊書けるくらい長くなりそうなので、実際、一冊考えている本を紹介しておく。


ゆるふわ女医が医療界にしわ寄せをもたらすとは言うと、何も考えていない「きらきら女医」のせいで医療に負担がかかると彼女らを責めたくなるかもしれない。別にその選択をする先生たちが悪いわけではない。人生のメリットデメリットを比較検討した上で「正解」の選択肢を選んでいるのだと思う。

それこそ冒頭で話した彼女のように医学生の頃から「どのルートに入るのが一番コスパがいいのか」を真面目に検討している。
初期研修を終えマイナー科を志望し、結婚出産後、週に3日くらい働くというところまで見据えている。

彼女たちが重視するのは「プライベートの時間があり、しんどくない」ことだ。そういう人が増えたらほかの科が手薄になるだろう。実際いま眼科耳鼻科皮膚科の人気が凄まじく、都会ではもういらんというところまできているらしい。医者のくせにプライベート重視なんて許されるのかと思う人もいるかもしれない。そんなこと言われたって知らんがな。そうなったら釣り合うところまで収入で差をつけてインセンティブを調整しなくちゃならない、とわたしは思うのです。

医学の将来を考えて自分の生き方を鑑みろ!と言われてもこっちだって人生一回しかないんだし、お得なルートがあるならお得なルートに行きたいに決まっている。

そこの期待値を調整するのが上の仕事だと思うのだが、民間と違って需要と供給に合わせて入ってくるお金が自然に分配されたりしない。例えばブラック企業とホワイト企業があってどちらも時給が一緒だったらみんなホワイト企業に行き、ブラック企業では人が足りなくなる。そうすると、時給を上げたり労働環境を改善したりして人を集めるしかなくなる。

医者の場合、給料の根っこが税金から来ているので、民間ほど素早く給料を上げたり下げたりできないのが難しい。

ゆるふわ女医は自分の人生をしっかり検討した上でコスパの良い道を選択している。ふわふわ笑っているけれど、合理的で賢い彼女は目の前の道でどれを選ぶべきなのか医学生のうちから比較検討している。

彼女のようなゆるふわ女医の卵を、すごいなと思いこそしても、馬鹿だと思うことなんて絶対にない。